ベートーヴェンは「第9」と同時期に交差しながら、同じく合唱つきの大管弦楽曲を作曲していました。 <br />ピアノの弟子であり、最も心強いパトロンだったルドルフ大公が、オルシュッツ大司教に就任することになり、その就任式のために作曲された「ミサ・ソレムニス-荘厳ミサ曲」です。 <br />「第9」の第4楽章と同じニ長調ですが、「第9」がひたすら上をめざして駆け昇って行くような音楽であるのに対して「荘厳ミサ曲」は、すでにたどり着いたあちら側から悠然と下界を見下ろすような作品です。 <br />事実、「ミサ・ソレムニス」の心境の高さは「第9」のそれより上であるという声もあるほどです。 <br />ベートーヴェンは楽譜の最初に「心から出でて心に通うように」という指示を書き込んでいます。 <br />出版社への売値は「第9」が600フローリンであるのに対して「荘厳ミサ曲」が1,000フローリンであったことからも、ベートーヴェン自身がこの作品に並々ならぬ自信を持っていたことがうかがえます。